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Reserrch
Our Research

これまでの(2023年までの)研究成果

私たちは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)やヒトB型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト白血病ウイルス(HTLV)、風疹ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)などの複製・伝播機構の解明、ウイルス感染症に対する新たな治療法・予防法の開発などを行っています。従来の方法では合成が難しいウイルスタンパク質を、コムギ胚芽を用いた無細胞合成系で発現させ、以下のような様々な解析を行っています。

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1. 宿主-ウイルス相互作用解析とウイルス複製機構の解明

ウイルス感染症の成立には、宿主因子とウイルスタンパク質間の相互作用が必須で、このことはウイルスの増殖、複製、病原性発現にも重要な役割を果たします。とくにタンパク質のリン酸化やユビキチン化といった翻訳後修飾は、そのタンパク質の機能を調節する上で極めて重要な機構です。しかし、ウイルスタンパク質の翻訳後修飾とその重要性についての知見は十分ではありません。そこで私たちは、ウイルスタンパク質の翻訳後修飾に着目し、宿主-ウイルス相互作用を網羅的に解析することでウイルスの複製機構や病原性の解明を目指しています。

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リン酸化酵素やユビキチン化酵素のライブラリーを作成し、ウイルスタンパク質と相互作用するものを、コムギ無細胞合成系とAlphaScreen法を組み合わせた定量的プロテオミクス解析によって探索しています。これまでにHIV Gagタンパク質やVpuタンパク質のリン酸化調節に関わる因子の同定に成功し、これらの因子が実際にウイルス複製を制御していることが分かりました。また、この技術を応用し、膜タンパク質とウイルス外套タンパク質との相互作用解析によって、ウイルス侵入レセプター探索も行っています。

2. ウイルス感染症に対する新しい治療法・予防法の開発

2-1. 酵素活性を指標とした薬剤スクリーニング系の構築
私たちは難治性ウイルス感染症に対する新しい治療法・予防法の開発にも力を入れています。例えば、コムギ無細胞合成系を用いて作製したウイルスプロテアーゼは、試験管内においても酵素活性を有していることが分かりました。そこで私たちはこの酵素活性を迅速に検出できるアッセイ系を構築し、ウイルス複製阻害薬の探索を行っています。

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2-2. ウイルス検出系の構築、中和抗体・ワクチン開発
近年、プロテオーム解析技術の発展により、患者血清や組織から様々な新興ウイルスが発見されています。これら新興ウイルスの検出や基礎研究には、ウイルスを特異的に認識する抗体が必要不可欠です。従来の方法で可溶化が困難だったウイルスタンパク質でも、コムギ無細胞合成系を用いることで比較的容易に、しかも大量に作製することが可能です。私たちはこれまでにHPIV3 HNタンパク質やHBV HBxタンパク質の可溶化に成功し、様々なアプリケーションに使用可能なモノクローナル抗体を作製しました。同時に、コムギ無細胞系で作成したウイルスタンパク質が、予防ワクチンとして使用できるかといった試みも行っています。また、患者血清中のウイルス特異的抗体・抗原の検出を行うことで、ウイルス性疾患の発症予測や予後の判定に活用できるようなシステム作りを行っています。

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